2023.07.14
今と未来のインターネット
株式会社Newt 代表取締役社長
杉本 貴英氏
パソコン修理・トラブル解決Newt:
https://newt.co.jp/仕事から日常生活まで、あらゆるシーンで欠かせない存在となっているインターネット。
インタビューシリーズ「今と未来のインターネット」では、インターネットにさまざまな形で関わる企業や自治体、学校関係等に話を聞き、活動や思いを通して、読者に多様な視点や新たな知見をお届けします。
今回お話を伺ったのは、名古屋市にあるパソコン修理、スマホ教室、IT導入コンサルなどパソコン・スマホのトータルサポート事業を行う株式会社Newt代表取締役社長の杉本貴英氏。高齢者などのサポートを通じて感じたインターネットの価値、経営者として掲げるコンセプトなどについて、話を聞きました。
(本文中:敬称略)
川上城三郎(株式会社Cadenza代表取締役社長、聞き手)
川上
こちらの会社の事業内容について、概要を教えてください。
杉本
当社は個人法人問わず、パソコンやスマートフォン(以下スマホ)に関するITサポート全般を行っている会社です。今一番多いのはパソコン修理のご依頼で、法人のお客様の場合は、修理だけではなく新しく事務所を出すときのパソコンやネットワークの設定などもお引き受けしています。それから、個人のお客様向けには、スマホ操作の個別相談会なども開催しています。
川上
具体的にはどのようなご相談が多いのでしょうか?
杉本
直接ご連絡いただくご相談だと、パソコンの電源がつかなくなったとか、画面が固まった、インターネットに繋がらないなど、本当に日常のちょっとしたことのお問い合わせが多いですね。パソコンに関しては、20代から60代、70代まで、本当に幅広い方からご相談をいただいています。
スマホに関しては、個別相談会が中心となりますが、ご高齢の方が多いです。シニア世代のスマホ相談としては、基本的な使い方だけではなく、例えばGoogleドライブとかOneDriveなどのクラウドサービスの使い方がわからないなど、プラスアルファの便利な使い方がわからなくて困っている、という声をよくお聞きします。
お子さんに聞けばわかるけれど遠くにいるからとか、面倒臭がられるので聞きにくいとか、家族間でもなかなか気軽に頼りづらいのかな、という印象です。私どものような業者だと気兼ねなく質問できるということで、ご利用いただく方もいらっしゃいますね。
川上
スマホの個別相談会というのは、どのような内容になるのでしょうか。
杉本
この相談会は、小売店を経営している大手企業が主催で、そこからお声掛けをいただきスーパーの店舗で開いています。主催している企業がシニア世代のデジタル格差をなくす取り組みをしていて、当社としてもビジネスというよりは半分社会貢献的な位置づけで続けています。
スーパーの中にテーブルを一つ置いて、当社のアドバイザーとお客様のマンツーマンでお1人様大体50分、500円です。最初はスマホ教室として、5名から10名ぐらいの方を対象に一斉に説明をする方式だったのですが、皆さん持っている機種や解決したい問題が異なっていてなかなかうまくいかず、今の1対1の形になりました。
川上
スマホの使い方で困っている方というのはやはり多くいらっしゃいますか?
杉本
だいたい週に一回開いているのですが、多い方だと毎週来てくださるお客様もいます。多いのは写真関係、それからLINEの使い方などですね。詳しい使い方というよりも、そもそもこの文字はどうやったら打てるのか、などといった質問も多いんです。
川上
そういった基本操作でつまづいて、使わなくなってしまったという方もいるかもしれませんね。
杉本
そうですね。そういうご高齢の方は非常に多いと思います。このスマホ教室で使い方がわかって、新たにいろいろ楽しんでいる、という声を聞くと、やはりうれしいですね。
川上
「今と未来のインターネット」というシリーズに紐づけてお伺いすると、ご高齢の方にとってインターネットは、人生の半ばで急に登場してきたものだと思います。それだけに、若いころから当たり前のように使ってきた世代とは異なる存在なのでは、と想像しています。スマホ教室などを通じて、間接的かもしれませんがインターネットユーザーとしての高齢者に直接接してきた杉本さんから見て、高齢者にとってインターネットとはどんなものだと感じていますか。
杉本
インターネットの定義にもよると思いますが、そもそも現在は生活のあらゆるものがインターネットに紐づいていて、ネットが使えないということはすなわち必要なサービスにアクセスできない、ということにつながります。
いわゆる一般的な生活を送ろうと思うと、電気や水道と同じようにひとつのインフラなのですが、インターネットがインフラだということを理解している高齢者とそうではない方で、大きな違いがあるのかな、と思いますね。
もちろん使わなくても幸せに暮らすことは可能なのですが、インターネットを使うことで享受できる便利さや楽しさ、豊かさがたくさんあるわけです。普通に使っている私たちにとっては当たり前のことですが、自分にはわからない、そもそも知らない、という方にどう伝えていくか、というのはとても難しいなと思いますね。
川上
御社では個人向けだけではなく、法人向けにもサービスをしているということでしたが、そちらの方面で何か今後の展望や、やってみたいことなどはありますか。
杉本
法人のお客様から直接ご連絡をいただくケースと、元請けが受注した案件を担当させていただくケースがあるのですが、当社の直接のお客様向けに、一回のパソコン修理で終わらず継続的にお付き合いをしていけるサービスができないか、現在検討しています。
自社のお客様としては、従業員10人とか20人くらいの中小企業や工場など中心なのですが、人手不足などの理由から、業務効率化のためにDX化をすすめたいと考えている経営者の方も多くいらっしゃいます。
川上
確かに、今はどこの会社も人が足りない状況なので、業務の効率化は必須の課題ですね。
杉本
そうなんです。ただ、特に規模の小さい企業だとIT人材が内部にいないことも多く、みなさん困っていらっしゃいます。もともとこうしたサービスを立ち上げようと計画していたわけではないのですが、お付き合いのある企業の方からどうしたら上手くすすめられるかとご相談をいただくことが増え対応していくうちに、ちょっとずつ形になってきた、という状況ですね。
社内に詳しい人間がいないところだと、新しいシステムを入れても動かなくなった、使い方がわからない、などでつまづいてしまうケースも多いんです。トラブル時に修理もできるというのは一つ強みだと思うので、培った知見をいかして、他とはちょっと違うDXサポートをしていきたいですね。
川上
いろいろな対応をするにあたって、会社として掲げている理念や、お客様にとってこういう存在になりたい、というものがありましたら、教えていただけますか。
杉本
理念というほどのものはないのですが、当社のスローガンとして「我々の活動を通して、より豊かなライフスタイルを提供する」ということを掲げています。
パソコンの修理は一つの手段であって、現在行っているサービス内容に限りません。私たちの活動を通じてお客様が豊かな心になれるような、そういった金銭的なものだけではない豊かさ、ライフスタイルをお届けしたいと考えています。
川上
なるほど。例えば実際の対応で、心がけていることなどはありますか?
杉本
ご依頼いただいた内容に対応するだけではなく、お客様が本来求めているのは何か、ということを意識するようにしています。
例を挙げると月末近くにパソコンを直してほしいというご依頼があったとします。その方が会社の経理担当だとすると、翌月になる前に取引先に振り込みをしないとなりません。直すには部品の取り寄せが必要で、修理完了に1週間かかります、となると、パソコンは修理できてもそもそもの問題解決にはならないんです。そうした場合は、例えばネットバンキングのソフトを入れている銀行等に連絡を取って他のパソコンにソフトを入れ、そのパソコンから振り込みができれば、修理が間に合わなくても問題ないわけです。
お客様が本当にしたいことをしっかりヒアリングして、そこにパソコンを修理する以外のアプローチも合わせて考えることができれば、問題を解決することができます。お客様に寄り添って、そうしたきめの細かい対応を一つ一つ積み重ねることで、お客様にも喜んでいただけますし、信頼を築くことができるのかなと考えています。
川上
本質的な困りごとを把握して、どういった手助けができるかを考えるんですね。
杉本
先ほどのスローガンでも、「より豊かなライフスタイルを届ける」の前に、「我々の活動を通して」という言葉をあえて入れています。ここはこだわって書いた部分になるのですが、僕自身の仕事の意義としては、いろいろな方と知り合って、頼っていただいた際に力になり、あなたと会えてよかったと思っていただくことなんです。
中小企業の経営者は、社員となかなか深い話をするのも難しく、悩みがあっても相談先がない、気軽に愚痴も言えない、という方も多くいらっしゃいます。知り合ったきっかけはパソコン修理かもしれませんが、時には仕事抜きで雑談したり、たまにはお酒を飲みにいったりしながら、楽しい時間を過ごしていただき、豊かなライフスタイルを感じてもらえたらうれしいですね。
川上
ありがとうございます。最後に、杉本様にとって、「インターネットとは」を一言でいうと、何になるでしょうか。
杉本
難しいですね、考えたこともありませんでした。ある意味手段だし、なくてはならないものでもある一方、人によってはそんなに必要がない。
僕があえて言葉にするとしたら、「生活をより便利にするもの」ですね。
インタビュー年月日
2023.06.21