新たに始まった「ステマ規制」、日本と世界の消費者保護、デジタル世界の未来とは

2024.01.10

インタビューにご協力いただいた方

龍谷大学法学部教授

カライスコス・アントニオス

ABOUT

  • 龍谷大学HP:

    https://www.ryukoku.ac.jp/
  • 好きな言葉:「ものごとはね、心で見なくてはよく見えない。いちばんたいせつなことは、目に見えない」(『星の王子さま』アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ(著)、河野万里子(訳)新潮社より)
  • 趣味:音楽、映画鑑賞、語学

INTRODUCTION

仕事から日常生活まで、あらゆるシーンで欠かせない存在となっているインターネット。 インタビューシリーズ「今と未来のインターネット」では、インターネットにさまざまな形で関わる有識者や企業等に話を聞き、活動や思いを通して、読者に多様な視点や新たな知見をお届けします。
今回お話を伺ったのは、ギリシャから来日し、日本や世界の消費者保護のあり方などを研究している、龍谷大学法学部のカライスコス・アントニオス教授。
2023年10月よりスタートしたいわゆる「ステマ規制」の仕組みや今後の影響、カライスコス先生の考えるデジタル時代に求められる消費者保護などについて、お話を伺いました。(本文中:敬称略)

川上城三郎(株式会社Cadenza代表取締役社長、聞き手)

Cadenza代表:川上城三郎とカライスコス教授ツーショット
画像:左・弊社代表川上城三郎、右・カライスコス アントニオス教授

新たに始まった「ステマ規制」、規制の内容や影響は

カライスコス教授

川上

先生のご経歴、主な研究内容について、教えてください。

カライスコス氏(以下敬称略)

私は父がギリシャ人、母が日本人で、アテネ大学を卒業した後、日本にきました。ギリシャでは国内の人口が少なく失業率も高いため、修士か博士のときに外国に行くという方が多いんです。特に法学の世界では、研究者だけではなく、実務家として弁護士活動をする上でも海外で博士号などを取った方が有利だと言われています。

アメリカやドイツ、イギリス、フランスなどに行く方が多いのですが、私は同じことをしてもライバルが多く差別化ができないと考え、母の母国である日本を選択しました。

幸い、小学校3年生から日本語を勉強していたため言葉はある程度できましたし、日本の文部科学省の奨学金があり、ギリシャにある日本大使館経由で手続きができたんです。申し込んだ結果、無事に選考プロセスを通過して採用していただけたことから、26歳の時に来日しました。その後2010年に大学の教員になり、現在は龍谷大学で法学部の教授を務めています。

専門は、民法と消費者法で、民法の中では特に契約法を中心に研究しています。消費者法の最近の研究だと、デジタル関係やオンラインプラットフォームにおける消費者の保護、それから「不公正な取引方法」と呼ばれている、不当な広告やマーケティングの規制などが専門です。

川上

2023年10月1日より、ステルスマーケティング、いわゆる「ステマ」について新たな規制がスタートしました。ステマについて、また今回の規制内容について、教えてください。

カライスコス

ステルスマーケティングは、本当は業者による広告にも関わらず、それとわからない形で商品やサービスを紹介しているように見せかけ、広告であることを隠したものです。

例えばSNSでインフルエンサーと呼ばれる人たちがある商品の良い点を挙げておすすめしているのを見たとします。広告だとわかっている場合と、その人本人の純粋な感想だと思っている場合とでは、商品に対する消費者の受け止め方は変わってきますよね。本来広告なのにも関わらずそうと知らないでいると、消費者がそれを買うかどうか、合理的に判断ができなくなってしまうんです。

こうした状況から、今回、一般消費者に誤認されるおそれがある表示として新たにステルスマーケティングが指定され、規制されることとなりました。

川上

先生は、消費者庁が設置した「ステルスマーケティングに関する検討会」の委員のお一人として、今回の規制のあり方について検討なさってきました。検討会の中で、特に議論になった点や、規制に盛り込んだ方が良いと意見がありながら見送られた点などはあったのでしょうか?

カライスコス

検討会そのものは規制すべきという方向で全体がすすみ、そういう意味では特に意見が割れた点はありませんでした。他方で、規制のあり方について、景品表示法そのものの改正にとどめるのではなく、新法も検討が必要なのではという意見がでましたが、見送られる形になりました。

法律のお話になりますが、景品表示法では、「不当な表示」として3つを禁止しています。一つが「優良誤認」と呼ばれるもので、品質などに関して実際よりも優れているように見せかけるもの。

二つ目が「有利誤認」で、価格やアフターサービスの内容など、実際よりも有利な取引条件があると見せかけるもの。

三つめが一つ目、二つ目以外で消費者に誤認されるおそれがあるものです。こちらは個別に別途指定して、禁止する仕組みになっているのですが、今回のステルスマーケティング規制はこの3つ目にあたり、内閣府告示でステマが新たに指定されました。

川上

新しく法律ができたり、景品表示法が改正されたりしたわけではないのですね。

カライスコス

そうです。このやり方は禁止の対象となるものを個別具体的に指定していくので、消費者が騙されてしまうような新しい手口が出ると、それこそいたちごっこになってしまいます。こうした形ではなく、消費者にとって望ましくない表示を包括的に規制するため、景品表示法を改正したり、特別法のような新しい法律を作ったりした方が良いのでは、という意見もありました。

しかし、今回の検討会が設置された前提として、先進国ではほとんどの国がすでにステマ規制があり、日本が海外の悪質業者などからターゲットにされかねない、という状況がありました。消費者庁の資料によると、名目GDP上位9カ国でステマに対する規制がないのは日本だけであり、グローバルな事業者が、日本の消費者に対してのみ、ステルスマーケティングを行ったのではないかとみられる事例も紹介されたんです。

このため、まずは早急に現状を解消すべきだとして、今回は、より早く実施できる形になりました。

川上

規制開始から一か月余りが経ちましたが(編集部注:インタビュー時点)、今回の規制による影響、効果についてはどう評価していらっしゃいますか?

カライスコス

カライスコス:現時点で、規制がスタートしてからいわゆる「違反事例第一号」が出ていないので、その最初の違反事業者が出ると、もう少し具体的に影響や効果が見えてくるかなと思います。おそらく、最初の事案は消費者庁も大体的に発表するでしょうし、「ステルスマーケティング規制で初の措置命令」のようにニュースなどで大きく報じられることが予測されます。

それを受けて、ステマをしていた事業者に対し消費者がどう反応するか、同じ業界の他の事業者はどのように動くか、注目ですね。

ただし、現時点でも実効性という点で心配される点もあります。例えば、景品表示法の先ほどご紹介した3つの不当な表示を規制している条文には、『事業者は、自己の供給する商品又は役務の取引について、次の各号のいずれかに該当する表示をしてはならない』と書かれています。つまり事業者の責任しか定めていません。インフルエンサーとか、アフィリエイターなどは、事情をわかってステマに加担したとしても責任を負う対象には入っていないんです。

それから、今回の規制だと、違反をしたとしても、措置命令を出すことしかできません。先ほどの優良誤認、有利誤認の場合は課徴金をかけることができるのですが、ステマは課徴金がかけられないんです。措置命令でも、消費者に対して違反したことを周知するため、一定の効果はあるとは思うのですが、他と比べると少し実効性という意味で問題があるかなと思います。

川上

何をもってステルスマーケティングとするのか、線引きが難しいなと感じる点はないでしょうか。

カライスコス

そうですね、あります。また、今回の規制では対象にはならないけれど、消費者に一定の誤解を与えかねないなと感じるものもあります。最近よくあるのは、クチコミを投稿したらクーポンなどがもらえるという仕組みです。例えば、いろいろなホテルが掲載されているウェブサイトで、クチコミを書いて評価をしてたら割引クーポンをもらえるとします。必ずしも褒めないといけないわけではなく、酷評してもいい場合、内容は委ねているのでこれは今回の規制対象となるステマにはあたりません。

しかし、私達が商品やサービスの評価やレビューを見るとき、書かれている内容だけではなく、投稿数からも影響を受けていないでしょうか。このホテルは利用者が多いな、ここは利用者の投稿が少ないからちょっとやめておこう、と。こうした事情を考慮して、「このレビューは、クーポンキャンペーンの一環として投稿されました。投稿内容については関与せしていません」と、サイトに明示している事業者もいます。自主的に、ユーザーに情報開示をして誤解を招かないようにしているんですね。こうした対応は素晴らしいと思います。

日本の消費者保護制度、海外と比較したメリット・デメリットとは

Cadenza代表:川上城三郎

川上

ステルスマーケティングについて、海外ではどのような規制になっているのでしょうか。

カライスコス

世界的にみて高水準な消費者保護の制度があると言われるEUは、個別の手口ごとに禁止するのではなく、「不公正な取引方法」という形で枠を作り、包括的に規制するやり方をとっています。おそらく、新しい手口がどんどん出てくることを想定して、将来的にも対応できるようにしているのだと思います。アメリカも似たような規制ですね。

川上

先生は、EUのように日本も幅広い規制をした方がいいと思いますか?

カライスコス

それぞれのやり方に長所と短所があるので、一概にどちらかが優れているというのは難しいのですが、個人的には、EUのように、不公正な取引を包括的に取り締まる方が、消費者保護の観点でより効果的なのではと考えています。

例えば、少し細かい話なのですが、今の景品表示法では、「次の各号のいずれかに該当する表示をしてはならない」と書かれた条文のあとに、1号に優良誤認、2号に有利誤認、3号に「前二号に掲げるもののほか、商品又は役務の取引に関する事項について一般消費者に誤認されるおそれがある表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認めて内閣総理大臣が指定するもの」となっています。この指定を今回受けたのがステルスマーケティングですね。この「指定するもの」という条件のところを消してしまえば、ほぼEUなどと同じく、広く「誤解を生じさせるような表示は駄目ですよ」となります。一回一回指定をする必要がないんです。

そうした形であれば、大きな法改正なども必要なく、都度指定をする手間をかけずに、問題がある表示を広く規制することが可能になるのではと思います。

川上

先生がおっしゃったような改正に至らない理由として、何かハードルがあるのでしょうか?

カライスコス

日本では法律などの必要性や根拠となる事柄を明確にする「立法事実」という考え方があります。法律で規制することが求められるだけの被害がそもそも生じているのか、そういったことをまず明らかにする必要があります。

さらに、業界からの反対でよく出てくるのが「営業の自由」というキーワードです。不当に広い規制なのではないのかという意見ですね。

ほかにも、こうした規制が必要な悪質事業者ほど、法律を整えたとしても法的な措置をとるのが難しい、という問題があります。特にデジタル広告の場合、悪質な事業者は、ばれたと思うとすぐに消してしまい、さらに運用している会社そのものの実態も把握しづらいケースがあります。気がついた頃には表示を消されたり、会社と連絡がつかなくなったりするんです。

これらの理由から、すぐに法改正を、となかなかならないのが現状だと思います。

川上

ステルスマーケティングに限らず、日本の広告規制のあり方や消費者保護に関する制度について、海外と比べて先生が感じる特徴などはありますか?

カライスコス

海外との違い、というと不足している部分や良くない部分に注目が集まりがちですが、日本独自のすばらしいところもあると思います。

一つが、日本の「消費者教育推進法」という法律の存在です。もちろん諸外国でも消費者教育は行われていますが、明確に法的な枠組みを持っているというのは珍しく、日本の強みだと思います。

この法律は、消費者教育を推進するために国や地方公共団体の責務などを定めたものなのですが、私が素晴らしいなと思うのおは、中でも条文の中に「消費者市民社会」という言葉を出してその理念を掲げている点です。

消費者市民社会というのは、公正で持続可能な社会を作ることに消費者が参画する社会のこと。例えば、何かものを買う際に、品質や値段だけではなく、いわゆる途上国の労働力を悪い状況の中で使って作っていないかとか、地球環境の破壊につながるものではないかとか、自分の利益だけではなく、周囲の人々や地球環境などのことまで考えた消費行動です。

川上

そのような法律があるんですね。

カライスコス

はい。法的な枠組みとして消費者市民社会を位置づけている国は、世界的にみてもまれだと思います。国の取り組みとして、誇れる点ではないでしょうか。

もう一つが消費生活センターの存在です。これも、世界的にみて珍しい制度だと思います。消費生活センターは、国家資格を持った人が無料で相談を受け付け、場合によって強制力はないものの事業者に対して介入をしてくれます。

諸外国の場合、ボランティア団体や消費者団体などでこうした相談を受け付けているところもありますが、日本のように、行政が作った枠組みの中でというのはなかなかないですね。

「人生全てが商品化されている」、人間らしくいられるデジタル空間は実現するのか

龍谷大学外観

川上

今後、研究を進めたい興味のあるテーマはありますか。

カライスコス

今、一番関心があるのはデジタルやオンラインプラットフォーム、AIに関係する消費者保護です。

例えば、デジタルと非デジタルで、同じ水準の消費者法が存在しているのか。EUではフィットネスチェックというものが行われていて、デジタルと非デジタルの消費者保護のレベルについて、EUが確認しています。

2024年にこのフィットネスチェックが終わる予定なのですが、調査結果が出てくると、おそらく日本だけではなく世界中で、それぞれの国の足りていないところを見直すなど、大きな動きがあるかもしれません。

具体的な例でいくと、スマートフォンやスマートウォッチといった、デジタルの要素がなければ、価値がほとんどないものが今の社会では増えています。スマートフォンを購入したところ、スマホそのものには問題がないけれどソフトウェアに問題があった際、それはスマホ側が対応するべきなのか、それとも機械としては問題がないのだから、ソフトウェアを作った側に相談するべきなのか。

デジタルの要素があって初めて価値が出てくる、あるいは機能できるもの、つまりソフトウェアが機能しなければ空っぽの箱になってしまうものの場合、何か問題があった際の責任の所在をどうするかというのが一つ検討課題になっています。

そのほか、アップデートの問題もありますね。例えば自動運転の車は、障害物を発見したり交通状況を把握したりできますが、今後技術の進化などにより搭載されているソフトウェアがどんどん良くなっていくことが予想されます。売ったときの状態から、さらなるアップデートが必要になるんですね。そうしたソフトウェアのアップデートをどこまで義務化するのかということも、今EUでいろいろと議論されています。

日本のPL法・製造物責任法は、基本的に引き渡した時点での安全性が基準です。デジタルじゃない時代の法律ですね。でもこれからはそうではなく、その責任がおそらくしばらくは続く。永遠ではないにしても、それを何年間にするか、商品によって違うのか、商品の一般的な寿命や消費者が利用する平均的な期間など何と揃えるべきなのか、いろいろな観点があります。

川上

デジタル以外、オンラインプラットフォームに関してはどのような点に興味をお持ちでしょうか。

カライスコス

私たちがオンラインプラットフォーム上で何かを購入した際に、そこで問題が生じた場合、誰が対応すべきなのかという問題です。日本でもプラットフォームの運営主体と、そのプラットフォーム上で商品を販売している事業者が異なっているケースは多々あると思います。日本では、メルカリなど大手のプラットフォームはある程度関与をしてくれますが、最終的にはやはり当事者間の問題になっています。それでいいのかという議論がEUでも世界中でもおきているんです。

プラットフォームがなかったら、私たちはプラットフォーム上で商品を販売している店舗や個人と繋がることはできませんし、プラットフォーム側はターゲティング広告で私たちが購入しそうなものを表示するなど、積極的に繋げようとしています。そして利益を得ているにも関わらず、トラブルがあったときは「私は第三者です」となる…それでいいのかという意見が出ているんですね。

Amazonは、一部の国でトラブルがあった際の損害賠償に一定金額まで応じるという対応をとっています。しかしこれは法的にそう定められているのではなく、Amazonがプラットフォームとして自主的に対応しているものです。伝統的な法律の枠組みで見ると、契約は個別になっているんですね。プラットフォームと私、プラットフォームと店舗、私と店舗。私が商品を買う際の契約は私と店舗の契約であって、プラットフォームは当事者ではありません。そこをどう乗り越えるのかというところが、オンラインプラットフォームに関して気になっている事柄です。

川上

わたしたちにとってもかなり身近な問題ですね。AIに関してはいかがでしょうか。

カライスコス

AIに関しては、民法で言われている私的自治の原則や契約自由の原則が通用するのか、という点に関心があります。

従来は私が商品を見ていいなと思って購入する場合、詐欺や脅迫、錯誤があればそれは例外として取り消しができますが、基本的にはその行動を決めたのは自分なので法的に拘束されます。

ところが、AIの登場によって、オンラインとかデジタルの世界では、自分の意思でクリックしているつもりでも、本当はうまくそこに誘導されているのではないかという疑念が出ています。個人データによって行動から趣味嗜好、ありとあらゆることを把握され分析され、まさに私が買う可能性が非常に高いタイミング・形でプレゼンされて購入ボタンを押したときに、自分の意思で買ったと言えるのだろうかと。

EUでは、まだ立法段階なのですが、AIを規制をする法律を作っています。その法律では、リスクに応じた分類をしていて、例えば子どもに対するターゲティング広告は禁止、というようにやってはいけないもの、やってよいけれど一定の措置を講じる必要があるもの、自由にやってよいものと分かれています。

AIに関しては、購入する、入会するといったお金を使うという判断そのものをもうAIに任せるのはどうだろうという意見まで出ています。自分が好きなもの、買いたいもの、年間で使える金額、収入などを事前に全部インプットして、あとはもうAIに任せるという近未来ですね。

これはどちらかというと現実味のない、まだサイエンスフィクション的なところがありますが、個人情報の取得に関する同意をAIに任せるというのも、より現実味のあるお話として出ています。外国のサービスを使っていると「個人情報を利用してよいですか」という案内が出てきますが、おそらくみんな面倒くさいから同意、同意と機械的にクリックしているのではないでしょうか。「同意疲れ」などという言葉も出てきている状況で、もうこれに関してはAIに任せてはどうかという議論が出ています。

例えば性的な描写のあるアダルト系のサイトとは一切関わりたくないとか、自分の位置情報は取られたくないとか、そういう情報を全て入れておいて、その上で同意不同意をAIが決めてくれるという仕組みですね。

このように、時代の進化に伴い、消費者保護のあり方、整えるべき制度も変化が必要とされています。日本が、世界がそれに合わせてどう対応していくのか、引き続き研究を続けていきたいと思います。

川上

先生が考える、消費行動、広告のあるべき姿や、将来こういう世界になるといいなと感じる理想像のようなものはあるのでしょうか。

カライスコス

今感じているのが、私達の人生全てが商品化されつつあるという懸念です。閲覧しているだけなのにこういうものを見てる、こういうものが好きなんだとどんどん情報が持っていかれて、移動するだけでも、位置情報から行動パターンを読み取られてしまいます。私のすべての情報が取得され、分析され、そして何かしらの商品やサービスを売りつけてこられます。私という人間から、できる限りの利益を生み出そうという動きに囲まれているように感じるんです。

こうした状況は私としては望ましい消費のあり方ではないと思っていて、抽象的ですが、より私達を商品として扱わないような世界が実現できたらいいなという理想があります。オフラインだけではなくデジタル上でも、そもそも生きた人間として広告とか利益とか営業とか、そうしたものに接しないような空間がある、事業者が私を使ってお金を生み出せない時間がほしいと感じているんです。デジタルの世界では、おそらく今、そうした空間・時間はほぼ不可能です。そうした状況を、デジタルにおいても実現できたらいいなと思っています。

川上

最後に、こちらのシリーズで必ずお伺いしているのですが、先生にとってインターネットは、一言で言うと何になるでしょうか。

カライスコス

使い方次第で価値が変わるもの、ですね。大学のゼミでも、インターネットを取り上げたディベートをよくするのですが、学生たちの意見を聞いていると、最後は本人次第なんだなというのを改めて感じますね。インターネットそのものがいい・悪いというよりも、私達がそれをどう使うのか、それが大切だと思います。

インタビュー年月日

2023.11.17

Interview
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